いったん相続放棄を選択すると、撤回することは原則として出来ません。本当に相続放棄の手続を開始してよいか的確に判断するためにも、事前に以下のことをしておくとよいです。
冒頭で述べたとおり、相続放棄は原則として撤回できません。そうである以上、故人にどのようなプラスの資産やマイナスの資産があるか調査をする必要があります。
〈1〉現金
いわゆるタンス預金やへそくりといった形で、故人が生前に保管している可能性があります。
〈2〉預貯金
預貯金通帳を用途別に複数所有しているケースは多くみられますが、普段使用していたものだけでなく、数年にわたって使用されていない、いわゆる休眠預金が遺されている可能性もあります。故人のお住まいだった近くに他の銀行がないか、同じ銀行でも別支店の通帳を複数所有していないか、慎重にチェックしましょう。
〈3〉不動産
故人の不動産については、固定資産課税台帳記載事項証明書をとりよせることで把握することが出来ます。
一方で、名義が異なっていても、故人が不動産の所有者となる場合はあります。例えば以下のような場合が考えられます。
[故人が先代の不動産を相続していた場合]
故人よりもさらに前に遠戚が亡くなっていないか、その親族が不動産を有していなかったか、調査する必要があります。
[故人が不動産を譲りうけていた場合]
売買や贈与などの契約に基づき不動産を譲り受けていれば、当然、相続財産となります。契約書が残っていないかチェックしましょう。
[時効取得をしていた場合]
故人が居住していた不動産の名義が第三者のものであっても、20年間(場合によっては10年間)自己の物として住み続けていれば、故人の所有不動産となります。
〈4〉投資信託・株式
相続人が知らないうちに故人が投資信託や株式を有していたということはありえます。故人宛てに証券会社等から通知があるか、郵便物をチェックしましょう。
〈5〉債権
故人が第三者に債権を有していた場合には当該債権が相続の対象となります。典型的なものとしては、貸金や賃料などがあげられます。
債権の発生を証明する書面(契約書など)が残っていないかチェックしましょう。
〈6〉生命保険金
故人が受取人となっている場合は遺産となります。
一方で、故人が契約者となっていても、故人以外の者を受取人とする生命保険金は遺産に含まれません。したがって、後者の場合は、受取人が相続放棄を行っても、生命保険金については受領することが出来ます。